新型コロナに対するレポート

家の換気


 今、全世界中で新型コロナウイルス感染による肺炎で身体に重要な問題をもたらしていることに対し、常に住まいづくりに取り組んでいる者としてこの問題に向き合ってみたいと思います。

 まず、感染の温床となっているのはいったいどこなのかということですが、電車やバスなどの交通機関以外に職場や住まいなどの建物などがあります。それらの中では、家族同士の場合もあるし、友人や知人同士の場合、あるいは職場の同僚や上司との場もあるでしょうし、不特定多数の場合など、互いに会話を交わす機会があります。ここでは建物に特化しますが、近年の建物の設計にて、シックハウス対策としての換気計画図を作成しなければなりません。そこでは、建物の気積に対しての換気風量に見合った換気扇の設置に対し、その換気量に見合った給気口を設けなければなりません。これは、建物の施工性の向上に伴い密閉度が上昇したため、空気環境の確保を目的としたためで、その多くは、第3種換気方式とした24時間換気となっているようです。ただし、スイッチ付、あるいは給気口の調整レバー付きとなっています。なぜかというと冬場の寒い時期など、外気の冷たい空気を室内にもたらすのを嫌う傾向があるため、スイッチをOFFにすることや調整レバーを閉めることで一時的でも冷たい空気が室内に取り込まれないようにしているためのようです。そのことは、室内の換気量に大きく影響してきます。

 

 現代の家づくりに反して、過去からあった茅葺屋根の家などは、屋根面に越屋根という排気窓をもつ小さな屋根がついていました。その住居の中では、囲炉裏があって、そこで団らんされていました。囲炉裏では炭をおこしていました。炭をおこすことで、必然的に一酸化炭素や二酸化炭素の燃焼ガスが排出されます。昔の家は隙間が多かったので、あらゆる場所から入ってきた空気と交わり、越屋根の排気窓から排気されていたから一酸化炭素中毒などにはならなかったのです。大人一人当たり20㎥/hの新鮮な空気が必要とされていますから、昔の方々の知恵というのは誠に理にかなった方法だなとつくづく感心します。

 

 隙間が多かった昔の家に見られるような縦方向の換気の流れに対し、隙間が少ない今の住居は横方向への換気ルートの見方がほとんどであります。この見方の問題点は、先の温熱環境への影響が考えられます。果たして、先の行為によって換気量が縮小し、感染しやすくなったのかどうかというのはわかりませんが、密閉空間を生んでいることには違いはないでしょう。今回のウイルスに限らず、スイッチに触れようが触れまいが、常に換気されていて、なおかつ建物内の温熱環境に影響が出ない設計・施工がこれからは必要ではないかと考えるところであります。

 

一級建築士 橋本 恒宏